リサーチユニット長・「光貯蔵技術の実現」グループ
理工学研究科(理学系) 教授
内藤 俊雄
本リサーチユニット(RU)のユニット長の内藤です。このRU内では、「①光貯蔵技術の実現グループ」に所属しています。専門は固体物理化学、機能性物質科学で、具体的には(未知、既知)試料の合成(開発)から得られたものの電気、磁気、光学物性に至るまでの各種物性測定と、それらを解釈するための電子状態の理論計算を行っています。これまでの経歴や研究業績に関しては、内藤 俊雄 (Toshio Naito) – マイポータル – researchmapをご覧ください。これまでも約10年間にわたり、学内の各種研究プロジェクトの代表を務め、部局横断型や分野横断型の広範な専門の顔ぶれを束ねた研究グループを組んで、光磁性伝導体の開発、有機超伝導体の開発、各種電池の開発、フラクタル次元と電子物性の定量的・普遍的関係などを研究してきました。またこうした基礎的なテーマを軸に環境問題やエネルギーの高効率利用といった現在のグローバルな課題にも目を向け、そうした方面への展開も試みてきました。今回のRUでは、こうした過去の学内プロジェクトの粋を集め、カーボンニュートラルという喫緊の大きな課題にメンバー一団となって挑戦します。中でも「①光貯蔵技術の実現グループ」は、構成上は私一人ですが、他のメンバーの力も借りながら、自身が最近見つけた“常識を覆す可能性”、つまり“光を物質中に蓄えて、自由に持ち運び、好きな時に光源、熱源、電源などのエネルギー源として使えるか?”という難問に挑戦していきます。乞うご期待ください。
「有機二次電池開発」グループ
理工学研究科(工学系) 教授
御崎 洋二
多段階酸化還元系を用いた有機分子性導体ならびに有機二次電池材料の開発を行っており、新分子の合成技術を基盤として、有機エレクトロニクス技術やカーボンニュートラルへの貢献を目指しています。専門は構造有機化学、物性有機化学で、酸化還元活性な含硫黄有機分子の合成と酸化還元挙動の解明、分子性導体や有機二次電池といった機能性材料への展開に関する研究を行ってきました。これまでの経歴や研究業績に関しては、御崎 洋二 (Yohji Misaki) – マイポータル – researchmapをご覧ください。本RUにおいては、②「有機二次電池開発」グループに所属し、優れた電池特性を示す有機正極活物質材料の開発を目指して研究を行っています。有機正極活物質材料は、レアメタルフリーのため資源的な節約が可能、現行の無機材料に比べ熱暴走しにくい、といった利点があります。このような利点を生かしつつ、高いエネルギー密度や長いサイクル寿命をもつ高性能な有機性極活物質の開発を行っております。本RUでは、物理学あるいは物理化学を専門とする他のメンバーと密接な協力を仰ぎながら現状抱えている高度な問題を解決することが可能となるので、研究を飛躍的に進展させることができると期待しております。
「有機超伝導体開発」グループ
理工学研究科(工学系) 准教授
白旗 崇
有機導電性材料の開発を行っており、物質開発の観点から有機エレクトロニクス技術の発展に貢献することを目的として研究を行っています。これまでに3種類の電子供与体に基づいて、10種類の新規有機超伝導体を開発することに成功しています。本RUにおいては③「有機超伝導体開発」グループに所属し、新しい有機超伝導体、特に純粋な有機物で構成された有機超伝導体の開発を目指して研究を行っています。同じ「有機超伝導体開発」グループのメンバーの山本准教授が見いだした超伝導発現機構に基づいて、新しい有機超伝導体の構成分子を設計・合成するとともに、超伝導以外の機能を併せ持つ複合機能材料の開発も行っています。具体的には磁性(強磁性、常磁性、反強磁性)が超伝導と相関・共存する磁性超伝導体の創出を目指しております。また、本RUの連携研究者である藤崎(大学院生、博士後期課程在籍)とともにキラリティーと超伝導が相関したキラル有機超伝導体の創出に関する研究も行っております。本RUのメンバーの知識と経験を結集して、これらの未開拓な物質の開発に取り組んでおります。どうぞよろしくお願いいたします。
理工学研究科(理学系) 准教授
山本 貴
いかなる伝導性物質においても、伝導性を決める重要な原子間(or 分子間)相互作用の大きさを求めることは、基本的かつ重要な研究です。ところが、X線構造解析や理論計算によって相互作用の大きさを推定するだけでは、しばしば間違った結果を招くことがあります。分子性の伝導物質では、光反射や電子遷移や分子振動といった分子特有の分光実験から重要な相互作用(例:隣接分子間の軌道の重なり、電子-格子相互作用、電子-電子間斥力)の大きさを決めることができます。この手法により、スピン液体の候補物質や超伝導相において、電荷と格子の協同的な揺らぎという、他の実験手法では見落とされがちな現象を発見しました。現在では反強磁性相に探索範囲を広げています。
分光測定による分子間相互作用の大きさの見積もりを、新規の分子性物質でもできるようにする研究も行っております。TTF誘導体や金属ジチオレン錯体が主なターゲットです。縮退に近い状態にある伝導体の分子軌道準位を決定し、相転移の駆動力となり得るのか判定する研究などを行っています。
ダイヤモンドアンビルを使って、分子性の伝導物質を加圧しながら物性測定する実験は、電気抵抗の測定以外あまり盛んではありません。そこで、分子分光学的手法を適用できるように測定法の改良を進めています。液体媒体の利用やナノ多結晶ダイヤの利用などです。
分子性の伝導物質の中でも、電子-電子間斥力の大きな方向と、電子-格子相互作用や軌道の重なりの大きな方向が互いに垂直である物質は、物性研究において特別な意味があります。何故なら、一軸圧縮によって電荷同士の反発力と引力をほぼ独立にコントロールできるからです。この原理をうまく利用して、静水圧や化学的置換では超伝導にすることができない物質を超伝導にする研究を行っております。
理工学研究科(工学系) 博士後期課程
藤崎 真広(連携研究者)
私は有機導電性材料の開発を行っており、キラリティーが相関した新規物質の開発を行っています。本RUにおいては③「有機超伝導体開発」グループに所属し、新しい有機超伝導体、特にキラリティーと超伝導が相関したキラル有機超伝導体の創出に関する研究を行っています。主に、新たに設計された有機超伝導体の構成分子の合成と結晶作製を担当しています。物性測定に関してもRUメンバーの先生方に、力添えをいただきながら行っていきます。本RUメンバーの先生方と連携し、新しい物質の開発に取り組んで行きます。
「基盤技術協力」グループ
理工学研究科(理学系) 教授
小原 敬士
本RUにおいては、個別テーマに所属せず、電子スピン共鳴(ESR)に関する基盤技術を提供することでRUの課題推進に協力します。ESRは、物質内で電荷のキャリアや磁性発現のもととなる(不対)電子を非破壊で直接観測することができ、その状態、密度分布、相互作用などの情報を与えてくれます。本RUの目指す新奇かつ特異な物性を有する物質では、「固体中の電子を通じたエネルギーの流れと制御」を光と物質の相互作用・電荷分離・相転移を通じ実現することから、その物質内の電子の量子的ふるまい・変遷を観測するESRは重要な基盤技術となります。短寿命有機ラジカル分子の構造や光化学反応・フリーラジカル消去などの高速化学反応の速度・機構について、電子スピン共鳴(ESR)や時間分解分光計測を用いた研究を実施してきたこれまでの経験を基に、定常光/パルス光照射,角度変化,広範囲の温度変化などを絡めたESR測定技術と解析法を提供することで本RUに貢献します。普段はESRや時間分解分光を応用した食品・飲料の活性酸素消去活性の研究を行っています。
理工学研究科(理学系) 准教授
小西 健介
本RUへは基盤技術協力Gとして参画しております。これまで無機・有機磁性体や金属・禁則間化合物の磁気状態や相転移現象を、極低温での熱測定、磁化・磁化率の温度磁場依存性や磁気熱量効果などの磁気測定から研究してきました。また、磁気センサーや高周波誘導加熱による癌焼灼療法に使われる磁性材料の基礎物性の評価にも携わっていたこともあります。他のRUメンバーと異なり軸足を置いている専門分野が物理ですので、少し違った視点でのアプローチが求められているのかなと思っています。
本学理学部に設置されている磁気特性測定システム(MPMS)は、SQUID(超伝導量子干渉計)素子を用いて主に固体の磁気特性を高感度・高精度に測定するための装置です。また、物理特性測定システム(PPMS)は物質の電気伝導・熱伝導などの輸送現象や比熱を測定する装置です。これらは約2K(零下271℃)の極低温から室温を越える温度範囲において強磁場下(それぞれ最大7Tならびに9T)での測定が可能で、さらに高圧力セルや紫外-可視光導入オプションを利用すれば、固体の磁気状態や超伝導状態あるいは光誘起相転移現象などを温度・磁場・圧力変化から調べることができます。これらの実験機器は固体中の電子のミクロ(微視的)な振舞いをマクロ(巨視的)な物理量の外場に対する応答から調べるツールであり、装置の維持管理も含めた測定技術を提供することで本RUへ貢献します。
理工学研究科(工学系) 准教授
松本 圭介
本RUでは基盤技術協力Gとして課題の推進に貢献いたします。私は磁気冷凍材料や磁性蓄冷材といった磁性材料の研究を行っています。こうした金属間化合物を作製・評価し、低温で比熱や磁化、電気抵抗を測定することで、その物性を明らかにしてきました。院生時代には、金属間化合物の超伝導についての研究も行っていました。本RUではこれまでの経験を活かし、新規超伝導体の物性評価などで協力してまいります。超伝導体であると確定させるには、超伝導転移温度以下での電気抵抗ゼロだけでなく、磁化の反磁性や比熱の跳びの確認が必要となります。磁場中での測定も行うことで、臨界磁場など超伝導状態の特性について調べることができます。こうした超伝導特性を、物理特性測定システム(PPMS)と磁気特性測定システム(MPMS)を用いた測定で明らかにします。この結果を物質合成にフィードバックし、超伝導転移温度や臨界磁場の上昇などを目指していきます。上記のように、低温での測定技術を活かして、超伝導体を始めとした材料開発に貢献してまいります。
学術支援センター(物質科学研究支援部門) 特任講師
森 重樹
本RUにおいては、基盤技術協力グループの一員として研究推進に協力します。本学においては共用大型分析機器を管理・運用する部局に所属し、その中でもX線単結晶構造解析装置を主として扱っており、これまでも学内外の多くの利用者に測定技術の提供、解析データでの研究討論を実施しております。本RUの研究計画は材料開発が基盤であり、新規化合物を合成、構造を明らかにすることは研究の出発点であると言えます。X線単結晶構造解析では合成した新規化合物の分子構造、分子同士の配列を直接的に可視化することが出来ます。また既知化合物であっても価数が異なる状態や、対イオンなどの組み合わせる相手を替えることによる新規な分子配列の達成も、極めて重要な知見をもたらすことになります。構造決定がなされた解析データから隣接分子との距離・角度などのパラメータを抽出、各種物性測定の解析や更なる分子設計にフィードバックを行い、性能向上を目指します。また有機合成を駆使し共役系化合物の新規合成と物性解明を研究してきた経験から、核磁気共鳴(NMR)に関する基盤技術も併せて提供することで本RUに貢献します。